今月3日、放送局がつくる第三者機関、放送道徳・番組向上機構(BPO)の放送道徳検証委員会はすべての放送局に対し異例の勧告を出した。
今回の勧告は、アニメ・ドラマなど演出のともなうすべての番組について「逃げるのかよ」というセリフを自主規制するように求めるもの。異例の勧告が出された背景にはどんな事情があったのか。
<人気のセリフ「逃げるのかよ」>
いまや、ドラマやアニメの脚本ではかかせなくなった「逃げるのかよ」。
このセリフが発せられると、『さっきまで乗り気じゃなかった好敵手が対決に応じる』『ふだんクールな人物を感情的にさせる』など、その状況を一変させる効果はピカイチ。それまではかたくなに動かなかった状況も、流れに関係なくたったひとことで話を進めることが可能な、まさに至れり尽くせりの魔法の言葉だ。
近年では、『ただその場から退去しようとした人』に対してもこのセリフが発せられるなど乱用が目立ち、使用の是非が問われているところであった。
<”実生活での使用”でかげりが見えた?>
メディアで人気のフレーズが実生活で使用されることは珍しくない。「逃げるのかよ」も例外ではなかったのだが、『脚本と現実それぞれの効果のギャップ』が問題となったのだ。テレビのなかでは無敵の「逃げるのかよ」もひとたび現実社会で使用するとそうもいかない。
安易に実生活で「逃げるのかよ」を使ってしまうと大変な状況におちいる。
1. 使用者と周囲のテンションのギャップに苦しむ
2. なにか劇団に所属しているのではないかと勘違いされる
3. 言われた側がリアクションにこまる
4. 言われた側が本気できれる

もっとも重大な問題は「4. 言われた側が本気できれる」である。「逃げるのかよ」が原因で事件が多数発生している事実に、BPO がしびれをきらしたというわけだ。(グラフ参照)
今回やりだまに挙げられたのは「逃げるのかよ」であるが、要注意のセリフはまだまだ多く存在する。過去にロングヒットしたフレーズでは、「よかった、本当によかった」(復唱による効果の増長)が、2002年テレビ朝日系で放映されたドラマ「サトラレ」で、1話中に4回も乱用されたという問題を受けて2003年に同機構より全メディアに使用自粛勧告が出されている。
実体をもたない「コトバ」は、プロでもあつかいがむずかしいということだろうか。「逃げるのかよ」の代替句がどんなフレーズになるのか、今後も目が離せない。
(記事の実配信日時: 2009-08-03 20:41:13)